2023年03月05日 石川県輪島市・珠洲市 能登外浦海岸
風光明媚な海岸ドライブコースとして人気が高い能登半島。車でもバイクでも観光バスでも楽しめますし、最近はサイクリングコースとしての知名度も上がってきているのかな、ロードバイクもよく見かけるようになりました。
一口に能登半島と言っても結構広くて、車でグルっと一周回ろうとすると金沢起終点で走行距離は300km以上、丸一日の行程になります。見所も多くて迷う人もいらっしゃるでしょう。
そんな中で、「とにかくに海を眺めながら車を流して能登感を味わいたい!」と言うんなら、僕なら輪島市街地から能登半島最先端に至る国道249号をオススメしたい。この区間は「奥能登絶景海道」という別名が与えられていて、能登の里山・里海の車窓を楽しめる絶好のドライブコースなんです。

輪島から珠洲に至る海岸には多くの観光スポットが点在しています。この辺りの海は外浦(そとうら)と呼ばれていて、外海ならではのダイナミックな風景がメインになります。それらをじっくり味わいながらでもいいし、それらを横目にとにかく突っ走るだけでも十分爽快で楽しい!
今回の記事はそんな奥能登のドライブコースと、いくつかのスポットをお伝えします!


輪島市曽々木海岸 窓岩
輪島市街から海沿いに走ることおよそ30分。町野というエリアを過ぎたあたりから「曽々木海岸」が続きます。この海岸は奥能登の観光スポットの中でも指折りの人気の場所で、国の名勝・天然記念物に指定されているそうで、要するに国のお墨付きをいただいた景勝地ってワケです。
曽々木海岸のシンボルと言えば、やっぱり「窓岩」。その名の通り、大きい岩の真ん中がまるで窓のようにポッカリとくり抜かれている不思議な岩で、能登半島の海岸風景を語る映像や写真にも多く使われているお馴染みの光景です。
「窓岩ポケットワーク」という駐車場とトイレがセットで整備された休憩スポットが併設されているので、ドライブ中のちょっとした息抜きで立ち寄るのもいいんじゃないかな。波打ち際は砂浜になっているので気軽に海に触れ合えるのもイイところ。

僕は奥能登をドライブする際は必ずと言っていいほどこの窓岩に立ち寄ります。今回も例にもれず車を止めました。いつもはポケットパークから窓岩を眺めるだけなんですが、今回はもう少し岩に近づいてみようと思います!
この辺から見る窓岩と海とのコラボレーションが僕的には好きな風景ですね。


岩場をぴょんぴょんと飛び越えながら、岩の真下まで近づきました。離れた場所から見るのとは随分違って、なかなか迫力があります!それに意外にも岩がヘラのように薄いではないか。よくこんな絶妙な造形が自然の力だけでできたよなぁと感心するばかりです。
その気になればもっと近づけるんでしょうけど、カメラ片手に持ってるのと、子供を連れていたのもあって、あまり無理はしないようにしました(^^;。

窓岩から眺めた曽々木海岸。
山が海岸線のすぐそばまで迫り、切り立った崖になって海に落ち込んでいるのが分かります。今でこそこの付近は走りやすい国道が通っていますが、技術の発達する前の時代は往来がかなり大変で、交通の難所だったそうですよ。

輪島市曽々木海岸 福が穴・麒山道
さて、曽々木海岸の難所っぷりがよく分かるスポットがあるので、そこにも立ち寄ってみました。窓岩から数百メートルほど珠洲寄りに進んだところにある「福が穴」という景勝地です。
まず目に入ったのは石仏です。今から230年ほど前に作られたもので、建立当時は顔があったかどうかは知りませんが、とにかく今はのっぺらぼう。

横の石碑に目をやると、この石仏の由来が書かれていました。
かつてこの地は「能登の親不知」と呼ばれるほどの難所で、マトモな道もなく、往来の際に命を落とす人も後を絶たなかったんだとか。そこで麒山瑞麟(きざんずいりん)という和尚さんが道を作ることを決心し、資金を集めておよそ13年かけて人が通れる道を切り拓いたことで、以来安全な往来が可能になったんだとか。この石仏はその麒山が人々の安全を祈り作ったものだと言われています。

この海岸には、波打ち際から内陸に向かって4世代の道があります。
第1世代(~1792年) 波打ち際の道なき道
石碑にも書かれている通り、かつて人々が岩に掴まりながら命を賭けで歩いた道。たぶん、今は跡形もないと思う。
第2世代(1792年~) 麒山道
下の写真では分かりにくいけど崖にへばりついた、麒山が切り拓いた道。明治時代になって県が大改修を行った。
第3世代(1963年~) 曽々木隧道・八世乃洞門
下の写真で四角く口を開けた車が通れるトンネル。かつての国道249号で、二つのトンネルで難所をクリアしていました。2007年の能登半島地震で被災し通行不能になっています。
第4世代(2009年~) 八世乃洞門新トンネル:
下の写真では写っていないけど、より内陸側に作られた新しい道。被災した曽々木隧道・八世乃洞門に代わって作られた1本の広いトンネルです。上の石碑の写真に写っている新しいトンネルがそれ。
下の写真からも分かると思うけど、垂直に切り立った崖ですよ。こんな危険極まりないところに昔の人はよく道を作ったよなぁと感心しきり。


さて、第2世代の麒山道を歩いてみましょう。
この道は明治になって石川県が大改修を行ったときに、2本の手彫りのトンネルが造られました。1本目のトンネルをくぐっている途中、出口とその向こうにある2本目のトンネルを撮ったのが下の写真。旧道マニア(?)だったら結構たまらないシチュエーションじゃないでしょうか。

1本目のトンネルを出て、海岸線とは反対側に目をやると、ぽっかりと開いた洞窟がありました。これが「福が穴」という海蝕洞(海の波により浸食されてできた自然の洞窟)です。
そしてこの洞窟を左右に突っ切るように走る鉄骨むき出しの橋は、第3世代の道(曽々木隧道)。このように洞窟の中を道が貫いている光景ってなかなか珍しいんじゃないかと思います。

洞窟に入っていきます。奥に進むにつれてだんだんと狭くなっていきます。奥のほうは光が届いていない暗闇ですが、人を感知すると一応ライトが灯るようになっています。ん~、今回は子供と一緒だったからまだ良かったけど、一人で来る場合は少し勇気が要るかも!?

洞窟の最奥に鎮座するのは不動明王。
洞窟の不気味さを一層醸し出すのに一役買ってます。これは小さな子はトラウマになるかもw

しかし、僕が個人的に最もトラウマになりそうだったのは不動明王ではなく↓コレです。
暗闇だったせいもあって最初は全然気が付かなかったんですが、洞窟の壁に何やら黒っぽいものが何個かくっついているではないか。ちょうど目線の高さ。触ろうと思うば触れる位置です。自分の人生で目にしたことがない物体なので一瞬何か分からなかったのですが、しばらくして状況が飲み込めました。
これって・・・コウモリ~~~!!( ゚Д゚)
ギャー、逃げろ~!!

いや、「逃げろ~」って実際に叫んだワケじゃないですよ。叫んだら飛び掛かってくるかもしれないのでw
ここは叫びたい気持ちをグっと飲み込んで、極力物音立てずにソっと立ち去ることにしました。後から考えるとコウモリってどうして怖いんだろう?別に普通の鳥が寝ていたって全然平気だし、コウモリも明るい場所でちゃんと見ればカワイイのかもしれんが、本能的に受け付けないんですよね。
ま、ここを訪れる方も、もしコウモリが苦手なら注意して下さいね(^^;。
さて、福が穴のハイライトともいえる光景があります。それは、洞窟の内側から外を見た時。
シルエットになった額縁の先に日本海と空の青が広がるなかなかの絶景。遊歩道に人が立てばシルエットとなって写ります。曽々木海岸で最大の映えスポットとも言えるかな。


麒山道の2本目のトンネルは、別名「せっぷんトンネル」と呼ばれています。
何だろう、この妖艶な響きは・・・日本語の妙ですかね。
1957年に公開された「忘却の花びら」という映画のせっぷんシーンのロケ地なんだそうで、無名だったこのトンネルに、道としては若干不名誉な(名誉な?)名前がついてしまいました。以前は「恋人の聖地」としても知られていたのですが、なぜか現在は聖地登録が抹消され、トンネルの入口にあったハズの金色に輝くプレートも覆い隠されていました。せっぷんトンネルに何があったんだろう・・・。

かつて麒山和尚が切り拓いた道を、明治時代に大改修した際に掘られた素掘りのトンネル。掘られたのが今から130年以上も前なので、それなりに歴史のある遺産とも言えるでしょうか。ゴツゴツとした粗削りの壁が特徴です。
これでも「大改修」ですからね。以前の道はどんだけ酷かったんだと・・・。

人々の安全な往来を期して作られた、飾りっけのない硬派なトンネルですが、くぐり終えて反対側からトンネルの中を見てみると・・・
なんとハート型のイルミネーション!
実は全国有数のナンパなトンネルだったのだ(笑)

せっぷんトンネルを抜けたところ。切り立った崖がまだまだ続いていて、危険な香りがプンプンします。
ここから先は、かつては遊歩道が続いていたのかもしれませんが、今は立入りが禁止されています。

来た道を引き返して車に乗り、第4世代の新しいトンネルを走って反対側に抜けました。
ここからは珠洲市になります。
曽々木海岸で窓岩に並んでシンボル的な存在なのが、垂水の滝。冬になると日本海からのあまりにも強い風のせいで、普段は滝を落ちる水が逆に空に向かって舞い上がるシーンで有名。
もちろん穏やかな日はちゃんと滝らしく下に向かって流れ落ちています。

窓岩からこの垂水の滝あたりまでが曽々木海岸と言われている場所です。
険しい海岸ですが、車を降りて海岸を散策できるのがいいですね。自然のままの姿が残っている場所が多いのですが、気を抜くとケガする場所もたくさんありますので気を付けましょう。
ちなみに曽々木海岸は冬になると大規模な波の花が見られる場所としても有名です。結構前に波の花を見に来たことがあるので、よろしければご覧くださいね。

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珠洲市 禄剛崎に続く道
さて、珠洲市に入ってからも奥能登絶景海道は続きます。
このまま能登半島の最先端、禄剛崎まで行っちゃいましょう!

ゴツゴツとした岩場があったかと思うと波静かな砂浜があったり、海岸にべったり沿って走っていたかと思うと急にヘアピンを描きながら山を登っていったり、ところどころ人が生活する集落も抜けていき・・・まぁ目まぐるしく景色が変わります。だから走っていて飽きないんですよね。


途中、「ゴジラ岩」というシャッタースポットを通ります。ゴジラ岩と名のつくスポットは全国にいくつか点在しているみたいですが、それらとは区別するために「能登のゴジラ岩」とも呼ばれています。
野球界のゴジラこと松井選手が活躍していた頃は、このゴジラ岩が結構人気だったような記憶があります。

僕はまだ見たことないけど、夕日の時間のゴジラ岩は美しいでしょうね!
シルエットが本当にゴジラに見えるかもしれません。

禄剛崎へ続く道のハイライトとも言える椿展望台。
輪島からだとヘアピンカーブのある急坂を登り切った峠に位置していて、駐車場とトイレがあります。ここから輪島方面の展望がすこぶる良好なんです。
ただ、ここから景色を見るなら断然午前中ですね。午後になると西に傾いた太陽によって逆光になってしまいます(この日も午後だったので逆光でした)。また、この時は3月上旬でまだ若葉が芽吹く前で何となく殺風景に見えましたが、緑が茂る季節になればまた違った光景になるでしょう。

時々見せるエメラルドグリーンの静かな海もまたよし。

西日でキラキラ輝く海もいいよね。
とても眩しい!

珠洲市 禄剛崎
輪島の市街地から奥能登絶景海道を走ること約50km、順調に行けば1時間ほどで、能登半島最先端の「狼煙(のろし)」という町にたどり着きます。
ここには道の駅狼煙があるので、そこに車を止めて軽く休憩してから、いよいよ最先端の地禄剛崎を目指します!
岬の灯台がある園地までは道の駅から徒歩およそ15分ほど。距離はそんなにないんですが、これがまぁまぁの坂道になるので運動不足の身には少々キツめのハイキングになります。

高台から望む狼煙漁港。能登半島最北の集落と港です。
防波堤に囲まれた内側は波が静かで若干エメラルドグリーンな感じがまた良い。

そしてやってきました禄剛埼灯台!
この場所に来たら絶対に撮らなければならない「能登半島最先端の碑」とともに。
久しぶりだ、ここに立ったのは8年ぶりくらいかな。

禄剛埼灯台は今から140年前の1883年に初めて灯された歴史ある灯台で、日本国内で23基しかないAランク保存灯台の一つ。機能的にはもちろん、歴史的にもむちゃくちゃ価値の高い灯台なんです。しかも今なお現役で、きっと今夜も航海の安全を見守っているはずです。


能登半島を旅する場合は、この禄剛崎が一つの区切りの場所になると思います。
ひとまずのゴールとしてここを目指す人もいるだろうし、グルリ半島1周の旅の折り返し地点と捉え、残り半分の旅路を前に気を引き締める場でもあるだろうし。
ちなみに今回のドライブ旅では、一応ここをゴールに設定していたので、今回はここから先へ進むのではなく、来た道を引き返すことにしました。

ってなワケで、能登の爽快ドライブルート、「奥能登絶景海道」でした。
今回は輪島市の曽々木海岸から珠洲市の禄剛崎に至る50kmほどの紹介でしたが、奥能登絶景海道はこれだけでなくさらに先へと続き、珠洲の市街地を抜けて見附島(軍艦島)に至ります。

(2017年02月04日撮影)
一方、曽々木海岸よりも手前側(輪島市街地側)に目を向ければ、白米千枚田があります。これも能登の里山里海を象徴するシーンであり、誰しもが感動する景勝地として知られています。

結局のところ何を言いたいかというと、奥能登絶景海道沿いにはその名前に負けないくらい能登の山海の絶景がたくさんあるってことです。能登は大きな半島だし見所たっぷりですが、もしどこへ行こうか迷ったならこのドライブルートを走ってみてください。おなかいっぱいになること請け合いです(^^)。
冬が終わり、桜の咲くシーズンを迎えました。北陸も長い冬を抜けてようやく春のドライブシーズンが到来です。北陸へお越しの際は是非能登の絶景を味わってみてください。
禄剛崎と朝日

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<奥能登絶景海道>
【駐車場】随所にあり、ほぼ無料
【入場料とか】ほぼ無料
【所要時間】2時間
【リンク】
奥能登絶景海道(奥能登岬みちづくり協議会)
曽々木海岸(能登輪島・曽々木観光協会)
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