光と言ってもキラキラした華美なものとはまるで違って、何ていうかとてもホッコリする柔らかで落ち着いた光。身を切るような寒さの中にあっても何だか温かみを感じる、そんな素朴なイベントに今年も行ってきました。
白峰雪だるままつりです!

旧白峰村の村民総出で雪だるまを作ってライトアップして観光客を迎え入れるというこのお祭りは、深い雪に閉ざされる厳しい暮らしの中でいかに村おこしを行うかを考えた末に生み出されたイベントで、今では石川県のみならず全国から雪だるまファンを集めるまでに定着しました。この冬は4年ぶりの開催だったそうで、久しぶりに冬の夜の賑わいが村に戻ったようです。
村内には実に様々な雪だるまが作られていて、その表情も千差万別。ため息が出るほど凝ったものや、思わず失笑してしまうものもあり、一つ一つ眺めていくのがとても面白いんですよね~。


白峰は伝統的な家屋が建ち並ぶ景観に優れた地区(重伝建地区)でもあります。
昔ながらの古き良き町並みと光に包まれた雪だるまのコラボレーションは、とても見応えがありました。

てなワケで、今回は白峰雪だるままつりの様子をお伝えします。
何かとストレスの多い時代じゃないですか、そんな時代に生きる人こそ是非とも見ておきたい光景かなと思いますね。
寒さを忘れるほど温かくて、心が洗われる気がします。
2023年02月03日 石川県白山市白峰地区
雪だるままつりが開催される白山市白峰は、金沢から国道157号を白山麓方面へ進むことおよそ1時間半の深い深い山間(やまあい)にあります。今は白山市の一部になっていますが平成の大合併前は「白峰村」という自治体でした。
白山の麓に位置し、冬期は吹き付ける季節風が壁のように立ちはだかる白山にブチ当たって次々と雪雲が湧き上がるため、白峰は雪まみれの世界。積雪が2メートルを超えることもザラな国内屈指の豪雪地で、国の特別豪雪地帯にも指定されているお墨付きの多雪エリア。そんな厳しい雪との暮らしの中で独特な建築様式が生み出され、村の中心部は国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に指定されています。古い町並みを歩くのが好きな人には是非オススメしたいスポットでもあります。


白峰にとって冬の豪雪は天敵みたいなものですが、逆にそれを武器にして冬でも人に来てもらって村おこしにつなげよう、ということで、地元の方たちが発案して30年以上も続いている冬のイベントが「雪だるままつり」。毎年1月末~2月上旬の時期に旧白峰村の白峰地区と桑島地区の2つの地区で開催されます。
このイベントはもはや石川県の冬の風物詩みたいなもので、毎年ニュースにもなって県民の認知度はとても高いんですが、いかんせん人が多く住む街から遠いのと、一晩限りであること、平日開催(白峰地区)であることなど、一般民が訪れるのはなかなか難しくもあるんですよね~。
「雪道の運転が怖くて行けない」と言う人も多いですが、道中は除雪体制が整っているので絶賛降雪中でもなければそこまで厳しいドライブではないと思います。気温が普通に-5度くらいまで下がるので細心の注意は必要ですが、普段雪道を運転されているならばあまり問題ではないでしょう。

(このキャラ、何者だかわかんないけど、とにかく目立ってた)
毎年大勢の雪だるまファンや写真愛好家、それに県民・村民が楽しみにしているお祭りです。しかし2020年は深刻な雪不足で開催できず、2021年と2022年はコロナ禍で開催を自粛。今年2023年は実に4年ぶりの満を持しての開催となったようです。無事に復活できて、村の人もホっと胸を撫でおろしていることでしょうね。
私自身は2017年に桑島地区で開催された「桑島雪だるままつり」以来、6年ぶりの探訪となりました。17年の桑島雪だるままつりの様子や雪だるままつりの概要、白峰における独特な雪だるまの作り方等については次の記事にまとめてありますので是非。

桑島雪だるままつり2017に行ってきた!/ほっこりします!ユニークな雪だるまの祭典 in 白峰
日本三名山のひとつ、霊峰白山の懐にある白峰という山里。前記事にも書いた通り、白山市白峰は日本有数の豪雪地帯であり、冬は冷たい冷たい雪に閉ざされてしまうし、石川県内でも冬の気候が特に厳しいところです。正直、よほどの用事でもない限り、平地に住む人はあまり寄り付かない場所かもしれません。でも、毎年最も雪深くなる時期に、ほっこりととても温かみのあるイベントが行われることで、今や全国から観光客を集めるほどに...
前置きはこのくらいにしておきましょう。
この日は穏やかに晴れて月や星が輝いていて、一方で冷え込みは強く気温は-2度くらいだったと思います。顔や手が痛いくらい寒かったけれど、まずまずの雪だるま日和って感じでしょうか。
重伝建の古い町並みの中でそこいらじゅうで見られる雪だるま。その数は2000体とも言われています。なんでも、各ご家庭では一家に住んでいる人の数よりも多くの雪だるまを作るのが目標なんだそうですよ。しかも夜のとばりが下りた後には雪だるまがロウソク等で丁寧にライトアップされ、村全体が幻想的な雰囲気に包まれます。その独特な世界観が好きで、この冬も見に来ました。




村内には実にいろいろな雪だるまが見られ、目を楽しませてくれました。
村内の団体や企業は大勢の雪だるまによる雛壇なんかを製作されていて、祭りに対する気合いの入り方が窺えます。きっと昨日・今日あたりは仕事もほどほどにして雪だるま作りに勤しんだんだろうな(笑)。
大きな雪だるまは、祭りや団体の宣伝にもなっているみたい。

国土交通省白山砂防女性特派員という団体様。
何となく女性メインで製作されたんだろうな、雪だるまが華やかです。

一方こちらはどちらかというと男性メインの職場か。
ヘルメットを被った雪だるまが印象的。

白山手取川ジオパークが「ユネスコ世界ジオパーク」への認定を勧告されたことを記念した看板や幟と雪だるま。
ユネスコ世界ジオパークは地質学における世界遺産みたいなもの。日本国内では9の地域が認定されていて、白山手取川ジオパークも2024年5月に仲間入りする予定なんだそうです。これは石川県の地質学マニアにとっては結構なビッグニュースです。


お食事処にも雪だるま。ついついお店で一服したくなります。


旅館「春風」さんの前の雪だるまはなかなかの規模でした。
雛壇づくりはもとより、ライトアップもなかなか気合いが入ってる!


各ご家庭の軒下にも数多くの雪だるまたち。
大規模な雛壇を作っている家庭は少数ですが、小さくても味のある雪だるまが多く見られました。しかもちゃんとキャンドルで演出していたり、他とは違う特徴を持たせたり、とにかくみんな手が込んでる。それぞれのご家庭の「味」が出ているようですね。
カラフルな毛糸の帽子やマフラーをあしらった雪だるまが数多く見られましたが、こうやって着飾るのが最近の雪だるままつりのトレンドなのかも!?

白峰の雪だるまは表情がとても豊かです。
写真をよく見ると分かるかもしれませんが、最近はティッシュなどの薄い紙に顔を書いて雪だるまに張り付ける「技法」が編み出されたようで、木の葉やボール紙などをくっつけただけのものに比べて見違えるほど表情のバリエーションが増えています。
白峰の人たちは30年も真剣に雪だるまを作り続けてきたわけですから、どうすれば可愛くて飽きの来ない雪だるまを作れるかをよく研究なさっている。雪だるま先進地域、雪だるまの最新トレンド発信地域と言ってもいいんじゃないかな。






ロウソクだけでなく凝った電飾のものも。

ぶっとい無数のつららが突き刺さった芸術作品(?)も。
つららへのライティングをもう少し工夫すればより壮大な作品になったんじゃないかって勝手に想像しますが、とにかくこのつららの存在感が抜群でしたね。しかしまぁ、これほどの太いつららを量産できるんだから、白峰の冬の寒さはやっぱり街よりも数段厳しいんだろうなって思います。


温泉に浸かっているような幸せそうな雪だるまたち。
そうそう、白峰の集落内にある白峰温泉総湯は是非ともオススメしたいお風呂です。「美人の湯」「絹肌の湯」と言われるほどお湯がとてもなめらかで、湯上りは肌がトゥルントゥルンになるんですよ、マジで。僕もたまにこの温泉目当てに白峰に来ることがあるんですが、金沢から往復100km走って入りにくる価値のある温泉です。


2023年は卯年です。干支にちなんだウサギの雪だるまも多く見かけました。「雪うさぎ」というのがあるくらい雪とウサギは相性がいいので、今年の干支雪だるまの製作は比較的ラクだったかもしれませんね!来年は辰年ですが、作るのが大変そうw。
しかしまぁウサギ一つとってみても実に様々な表現のカタチがあって驚きます。





キャラクターを象った雪だるまは子供たちに大人気でしたね。
トトロやアンパンマンなど、誰が見てもそれと分かる国民的大スターはもちろん・・・


ん?一体なんだろコレ?的なキャラクターも(笑)。

(はくさん信用金庫さんの「信ちゃん」というキャラらしいが・・・)
そして交番の前には警察の本気が垣間見られるパトカーの雪だるま!
これ、気合いの入れ方がハンパない。赤色灯は本物でちゃんと光ってたし、タイヤ・ホイールも本物でちゃんとしたアルミホイールじゃないですか。しかもコックピットには子供が座ることができるんです。ナンバープレートは実際しない「白峰ナンバー」なところに若干オチャメさを感じますが、分類番号に3桁の「800」ではなく昔の2桁の「88」を採用した意図は何なのか少し気になります。ちょっと観察力のある子供たちは「ん?」って思うでしょうね。

村内のお寺にも雪だるま。
聖得寺さんはちょっと控え目な感じですが、鐘楼の隣に4体の雪だるまが並んでいました。黄・緑・赤・紫のマフラーで着飾られていて、お寺のイメージとは裏腹になかなかカラフルな雪だるまたちです。


林西寺さんは本堂のライトアップが素晴らしかった。
また、それをバックにした親子3体の雪だるまがいい雰囲気を醸し出していました。山間の冬の厳しさの中に温かみのあるストーリーを感じる、そんな演出だったように思います。

行勧寺さんの雪だるまは割と今風な感じでしたね。
ドッシリとした鐘楼とポップな雪だるまたちの対比が良かったです。ライティングも他のお寺に比べて明るくて華やかでした。

ってなワケで、白山市白峰の雪だるままつりの様子でした!
村民が総出で楽しくこのイベントを作り出しているのがよく伝わりました。本当に地元に愛されているイベントなんだなと。かれこれ30年に渡って内容こそ大きく変わっていないんでしょうが、細かく見ていけば雪だるまの表情や飾りは着実にアップデートされているんでしょうね。
白峰の集落全体に広がる雪だるまと光による幻想的なセカイ。決して華美なものではないのですが、ホッコリとした落ち着いた光の演出が心に沁みる気がしました。このお祭りのキャッチフレーズ「明日忘れる豪華さよりも、永遠に心に残る素朴さを」そのまんまです。

2017年の桑島雪だるままつりの様子はこちら

桑島雪だるままつり2017に行ってきた!/ほっこりします!ユニークな雪だるまの祭典 in 白峰
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冬の白峰 純粋な町散歩

日本有数の豪雪地帯へ!白山市白峰の冬散歩/重伝建に指定された雪とともに生きる町
1月も下旬に突入し、一年で最も寒くて雪が多い時期になりました。ひと昔前は、この時期は平地でも雪がドカっと降り、週末には庭に雪の滑り台なんかを作ってもらって、近所の子供たちとソリ遊びしていたものですが、最近はそういうシーンを滅多に見ることはなくなりましたね。今年の冬も金沢の市街地では今のところ雪が少なくて、生活はラクだけどちょっと物足りない感じです。ドカ雪が降っている地方のニュースを見るたび、「これ...
<重伝建白峰地区>
【駐車場】臨時の駐車場(500円)あり
【入場料とか】無料
【所要時間】2時間
【地図】
【リンク】
白峰雪だるままつり
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