26 2022

小松市の苔の名所「日用苔の里」を訪ねる/地元の方々が守り伝える緑一色の世界

日本庭園で必ずと言っていいほど目にする苔。
苔は日本の国歌にもある通り、長い時間をかけて少しずつ作られていくものを美とする国民性を映していて、我々日本人の心の拠り所でもある植物・・・というと大袈裟ですかね(笑)。でも、苔の生み出す世界観に引き寄せられる人は実際に多いらしく、そんな人たちの間で注目を集めているスポットが石川県の小松にあります。
僕も今年の夏、そんな苔のセカイに触れることができました。それが、日用苔の里です。

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苔のびっしり生えた庭園は、特に夏場は深い緑の景色に癒されたり、涼を感じたりしますよね。
日用苔の里ももちろん目の保養に十分なほど美しい景観が楽しめるのですが、ここの苔の凄いところは、「魅せるために植えられているわけではない」、ということです。そんな他とは少し違う苔のメッカ、小松市日用の苔の里を訪ねたので、ご覧ください☆

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2022年06月19日 石川県小松市 日用苔の里


今回訪ねたのは、小松市の山あいにある日用(ひよう)地区です。付近は日用杉という杉の産地として知られていますが、他の山間の集落同様に人口は減り続け、現在は30人にも満たないほどの小さな集落です。そんな日用地区では昔から各家屋の裏庭には苔が生えていて、これを一般の人も鑑賞できるように地域の方々によって整備されたのが今回訪ねた「日用苔の里」です。

加賀温泉郷の粟津温泉からおよそ3km、温泉街から車で5分ほど走ったところにあって、加賀温泉や那谷寺、鶴仙渓などの主要な観光スポットにお越しになったなら、是非こちら苔の里にも立ち寄って欲しいところです。車の場合は、粟津温泉から山間に向かって道を進んでいくと、下の写真のような「苔の里」の看板が目に入るので、これを目印にするといいかも。
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この日は天気が良く、観光客も多くいらしゃっていました。20台くらい止めれそうな駐車場も、もう少しでいっぱいになる感じ。
ちなみに駐車場は無料で、そばにはトイレも完備されています。
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下の写真は苔の里の案内図です。
あまりにも簡潔な地図で笑っちゃいましたが、まぁこれで必要にして十分な情報量とも言えます。
地図でもわかる通り、苔の鑑賞スポットは左側の「入口」「あづまや」「現在地」に囲まれた苔庭と、道路を挟んで向かい側にある日用神社の境内です。
まずは入口から苔庭に入っていきましょう!
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苔の里の入口はこんな感じ。門からして若干苔むしていて、すでにイイ雰囲気醸し出していますね~。
ちなみに、苔の里の入園料(環境整備協力金)は大人500円、小中学生200円で、入口の左脇にある協力金箱に人数分のお金をセルフで入れるシステムのようです。お釣りは出ないので事前に小銭を準備しておきましょう。
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なぜここが苔の名所になったかというと・・・。
そもそも北陸地方は年間を通して雨が多く、そんな湿潤な気候と、山間の谷というこれまた湿度の高くなりやすい環境とにより、この日用付近はもともと苔の生育に適しているエリアだと言われています。さらに日用杉の杉林によって地表に届く日光が程よく抑えられ、また地面に落ちた杉の葉は燃料に使えるのですぐに綺麗に取り除かれたので、結果として苔がすくすくと育っていったと言われています。
他の庭園のように人に魅せるために苔を育てたわけではなくて、この地で営まれる人々の暮らしの結果としてたまたま美しい苔庭があるわけです。
入口からすぐのところでは、古民家と苔むした庭園のコラボが楽しめました。実際にこの民家に人がお住まいになっているかどうかは分からなかったけど、私たち一般の鑑賞者のために日々手入れがされている感じが伝わります。
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杉の木立と苔、見事な緑の世界!
ちょっと感動です!

木立から少しだけ漏れて入ってくる柔らかな陽射しもいいですよね。文字通り「木漏れ日」って感じ。
この日は少し蒸し暑さも感じられたのですが、苔庭に立っていると木陰になっているせいでそんなに暑さは感じなかったんですよね。このほどほど日陰でちょっと涼しいところが、苔にとってベストな環境なんでしょう。
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庭には苔むした石灯籠や鹿威しなんかもあって、日本庭園としても普通に楽しめます。
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鹿威しは最近滅多に見ない気がします。一緒に連れて行った娘も「あれは何?」と興味を示していましたが、いざ説明しようとするとこれがなかなか難しい。途中で諦めました(笑)。
実際に水が流れていて時折「カコン」と乾いた音が鳴り響くのですが、水を受ける側の筒が大きくて、「カコン」のインターバルがちょっと長めだったかな(^^;。
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日用町の町内には、48種類もの苔が確認されているそうですよ。つい「苔」と一括りにしてしまいがちですが、そんなにも種類がたくさんあったんですね(僕なんて昔学校で習った「スギゴケ」と「ゼニゴケ」くらいしか知りません)。
そんな苔の中でも、苔の里の代表的なものが鉢に植えられて名前が書かれていました。苔の里に来ると少しだけ苔に詳しくなれそうです。
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四角いケースのようなものに植えられている苔も目にしました。これは育てている最中なのかな?
このままここで根を張るのか、それともある程度育ったら別の場所に植え替えられるのかは分かりませんが、大事に育てられているみたいです。
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丹精込めて育ててきた密度の濃い苔の森。苔の絨毯という表現でもいいかもしれませんね。
見るからにフワフワしてそうで、許されるものならこの上で横になってみたい(笑)
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娘も思わず苔に触れていますが、ソっと触ってくれよ、ちぎるなよ・・・。
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ところで、苔の里にはこんな石碑がありました。

広がりし 苔の緑のやはらかく 人々のこめし 思ひ伝はる



2015年11月に金沢市で開催されたJCI 国際青年会議所の世界大会に当時の眞子内親王殿下がご出席された際、苔の里にも足を運ばれ、大変感銘を受けたんだとか。そして翌年1月の歌会始の儀でこの歌を詠まれたそうです。
この年の歌のテーマは「人」だったそうですが、苔の里の一面に広がる柔らかな苔を育ててきた地域の人たちの強い思いに感動されたのでしょうネ。
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苔庭には東屋があって体を休めることができるのですが、その東屋から眺める苔庭がまた最高に素晴らしかった。1年やそこらでできあがるものではないだろうし、ここまで綺麗なお庭に整えるには相当の時間と手間がかかったのだと思います。
これからも大事にしたい景観だと思いました。
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さて、道を挟んで向かいにある日用神社にも行ってみました。
日用神社は苔の里の順路に組み込まれていますが、間にある道路は車通りこそ少ないものの信号や横断歩道はないので、横断する際は特に気を付けてくださいね。
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神社の鳥居や参道の橋の欄干が、これまたいい感じに苔むしていました。この付近の世界観とマッチしています。
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杉林の中の小さなお社。
せっかくだから私と娘と二人、ちょっとばかしお賽銭を入れてお参りすることにしました(^^)。
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こちらの日用神社も、苔庭と同様に杉の木立と苔が美しかった。
杉の木漏れ日のおかげで適度な日当たりと日陰が作られ、苔の生育に適しているんでしょうね。
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ってなワケで小松市日用にある「苔の里」でした。
今回は夏の日差し照り付ける中での散策でしたが、雨の日にシットリとした苔庭を歩くのもまたいいかもしれません。次は雨の日に来てみようと思います(^^)。
それから、この付近は次世代に伝えたい貴重な農村風景として「美しい日本のむら景観百選」に選ばれています。苔と共生する集落は僕らが普通に住む街の周りではもうほとんど見かけることができない貴重なシーンなので、是非残していただきたいものです。
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<日用苔の里>
【駐車場】あり(無料)
【入場料とか】500円
【所要時間】45分

【地図】


【リンク】
苔の里(加賀里山里海プロジェクト)
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