19 2022

高岡市伏木の名刹、国宝「雲龍山勝興寺」を訪ねる/23年間の大修理で蘇った歴史ある大伽藍

高岡市の伏木(ふしき)はご存知でしょうか。
もし天気に興味があるのであれば、アメダス観測所がある町ということで知っている人も割と多いんじゃないかと思います。富山県の代表的な河川として知られている庄川・小矢部川の河口付近に位置し、古くから港町として栄えてきた歴史があります。そして、その歴史を物語る上でとても重要なお寺が伏木にはあり、今回初めて訪ねることができました。
その名も「勝興寺」さんです。

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勝興寺、実はつい最近までなんと23年間にも及ぶ大規模な修繕工事を行っていました。2021年にその全ての工事が無事完了して、江戸時代後期の美しい姿に蘇ったお寺が23年の時を経ていよいよ市民の手に戻ってきた、というわけです。
境内には国宝および国指定重要文化財に指定された建造物が12棟もあって、歴史的価値のとても高いお寺であることが分かります。

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ってなわけで、今回の記事は大修理を経て蘇った高岡の名刹、勝興寺の伽藍の様子をお伝えします!
高岡のお寺と言えば、北陸新幹線新高岡駅にほど近い国宝瑞龍寺が有名ですが、この勝興寺も実は負けちゃいない立派で重要なお寺だったんですね。
今回訪ねるまで全然知らなかった!(^^;

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※勝興寺は令和4年(2022年)10月の文化審議会文化財分科会の議決を経て、「本堂」と「大広間及び式台」が国宝に指定されることが決定しました!これを受けて本記事でも「国宝」の表現を使いたいと思います。


2022年06月11日 富山県高岡市伏木地区 雲龍山勝興寺


富山県西部の高岡は加賀藩ゆかりの街で、古くから銅器の産地としても知られています。観光都市、というイメージはあまり強くないかもしれませんが、市の中心部には高岡大仏や金屋町の古い町並み、そして国宝建築物を含む瑞龍寺などが控えていて、結構観光に向いている街だなぁという印象です。
今回訪ねた伏木エリアは、市の中心部から車で20分ほど、JRなら氷見線で12分のところにある港町で、遠方からやってくる観光客にとってはあまり聞いたことがない存在かもしれません。でも国宝の勝興寺を知ればそのイメージは少し変わってくるかもしれません。

車で来る場合は、伏木駅前に無料の観光駐車場があるので、そこに車を止めて徒歩で向かうのがいいんじゃないかと思います。伏木駅から勝興寺までは徒歩5分ほどですからね。
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(JR氷見線 伏木駅)


伏木駅から徒歩で勝興寺へ向かうと、まず最初に総門をくぐることになります。
総門は勝興寺の入口にあたる重要文化財の門なんですが、門の下に門番みたいな方(実際は交通整理の方)がいらしゃったため、じっくりと写真に収めることができなかったんですよね(^^;。しょーがないから、やや遠巻きに撮った写真で今回は勘弁してください。
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勝興寺は本堂をはじめとする12の建造物が国宝または国の重要文化財に指定されている、文化財的に非常に優秀な寺院です。でも平成初期の時点で建物はかなり傷んでいたそうで、文化財でありながら文化財らしくない見た目だったと言われています。そこで1998年より「平成の大修理」が始まり、時代は令和に移り変わって2021年に修理は完了。江戸時代の伽藍が復活し、令和4年に国宝指定が決定したのです。
内部には平成の大修理にまつわるプチ資料室みたいなのがあって、そこには修理前の伽藍の様子がモノクロの写真で展示されていました。写真を見て強く感じたのは「現在は見事に昔の姿を再現しているなぁ」ということと、それ以上に「修理前の傷み方が酷いなぁ」ということでした。
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(修理前の本堂、昔は瓦葺きだったんですね)

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(修理前の台所、一番傷み方が酷いかも・・・)



では、国宝や重要文化財の伽藍を見ていきましょう。
まずは唐門ですが、見てくださいこの堂々たる門構え!
このお寺すごいゾ感がビシビシ伝わってきます(語彙力・・・)。
もちろん、重要文化財!
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外観だけじゃなくて、唐門に施された緻密な彫刻がまた素晴らしかったですし、山号である「雲龍山」と書かれた扁額もイイですね。
この唐門、もとは京都の興正寺というお寺にあったものを譲り受けて、1893年にここに移築されたそうです。
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唐門をくぐると真正面にこのお寺の主役ともいえる国宝の本堂がデーンと構えます。思っていた以上に大きくて立派なお堂でビックリしました。
何でも勝興寺の本堂はおよそ40m四方の正方形に近く、国宝・重要文化財のお堂の中では8番目に大きいんだそうです。「高レベル文化財縛り」ってのが今まであまり聞いたことなくて面白いんですが、しかしまぁ何の中の何番目かは抜きにしても、相当見応えある大きなお堂であるのは確か!
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右から左から本堂を眺めます。車でも何でもそうだけど、やっぱり正面よりも少しずらして斜め前方から見るのが美しいよね。
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本堂の中はやっぱり広い!
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普通のお寺とはやっぱり違って、規模が大きいだけあってとても重厚な造りなように感じました。
昔から伝わる工法で複雑に組まれた柱や梁が、巨大な屋根を支えています。クレーン車などがなかった江戸時代によくこんなデカい建物を作れたよね、ホント感心します。
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門と同様にこちらにも彫刻が。
ところで勝興寺には昔から伝わる「七不思議」というのがあって、それら7つを探しながら境内を散策するのが勝興寺の楽しみ方なんだそうです。
そして七不思議の一つが「屋根を支える猿」という彫刻。
「この上にあります」的な看板があったにも関わらず、結局どこにそんな猿がいるのか分からずじまいでした(^^;。首が痛くなるから猿探しはほどほどにしておいて、立派な龍の彫刻を。
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七不思議ついでに、分かりやすいものなら本堂の前にあります。「天から降った石」というもの。少しツルっとした見た目のデカい石です。
仮にこれが天から降ってきた隕石だとすると、高岡周辺は結構大惨事だったんじゃないのかな?(笑)
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「実ならずの銀杏」というのもありました。実がならないのはアレですが、雄株だからとか、そういう話じゃないんですか?
ちなみに秋の黄葉はやっぱり綺麗なんだそうです。
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国宝の本堂以外にも、重要文化財に指定された建物がまだまだあります。
本堂の左手には経堂があります。残念ながら中に入ることはできませんでしたが、内部の八角輪蔵(お経を保管するための書庫みたいなもの)は極彩色で美しいんだとか。
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本堂の右手には宝蔵があって、これも重要文化財。海鼠壁は金沢城でもよく見かけるおなじみのデザインです。
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そして鼓堂という建物。これも重要文化財。
名前の通り、ここには太鼓が置かれていて、昔は境内や街の人に時を音で知らせていたと言われています。なんか見たことある建物だなぁと思ったら、前に行ったことがある出石の辰鼓楼とちょっと似ているかも。
平成の大修理の際は太鼓が修理の対象から外れていたものの、地域の有志たちがお金を出し合って太鼓を修理したんだとか。
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さて、本堂の右の方には、勝興寺で見ておくべきもう一つの主役、本坊があります。
本坊とはお寺の住職さんが住まいに使っていた建物のことを言うそうで、勝興寺にも立派な本坊があり、内部を見学できます。本坊には江戸時代の部屋が再現されていて、国宝に指定された大広間と式台、さらに重要文化財に指定された台所、書院、奥書院、御内仏などがあります。
もう文化財の宝庫ですな。
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本坊は境内でも特に痛みが激しかったところで、ほぼほぼ一度バラして組み直すくらいの大規模な修理が必要だったそうです。
修理前は瓦葺だった屋根は、江戸時代当時の杮(こけら)葺きに戻され、昔ながらの姿を取り戻すことができたようです。
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本坊の内部。それぞれ国宝の式台(玄関の近くにある客間で、控室みたいなもの)と大広間(多くの客人が集まって儀式や会合を行う部屋)がまず目に飛び込んできました。
コテコテに装飾されているわけではなくてシンプルな造りですが、そのせいもあるのかやたらスペースのデカさを感じました。大広間の広さは128畳で、我が家の部屋を全部足しても大広間の足元にも及びません(苦笑)。
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そんな中、ちょっとだけコッテリ感があったのが、上段の間と言われているスペースです。
何でも、天皇の使いである勅使という人が座って住職と面会していた場所らしく、このようなスペースがある地方の真宗寺院は勝興寺の他に例がないんだとか。勝興寺がいかに格式高いお寺だったかが窺えますね。
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(これが天皇の使いの勅使さん・・・ですかね?)


こちらは重要文化財の台所です。
中央の四角い木枠の中には井戸があるんですが、このように水場である井戸が部屋の中の高い場所にある造りはとても珍しいんだとか。確かに、室内が水浸しになるのが嫌だからなるべくなら低い場所に井戸を作るのが普通ですよね。
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書院と奥書院もこれまた重要文化財。
特に奥書院は通称「金の間」とも呼ばれていて、その名の通り壁や襖が金箔で覆われていて、豪華絢爛。住職の自宅スペースとして使われていたそうですが、こんなにもキンキラキンなお部屋だとちょっと居心地が・・・w
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あと、こういう屏風絵は結構どこでも見かける印象があるんですが、なぜか勝興寺の書院にも展示されていて、「ふーん」で済ませて通り過ぎようとしたのですが・・・実はこの洛中洛外図は立派な重要文化財でした!
京都の街中と郊外を描いた洛中洛外図の屏風は全国各地に存在しているらしいのですが、その中で国宝に指定されたものが2点、そして重要文化財に指定されたものが5点あり、重文指定の一つがこの勝興寺のものなんだとか。もちろん、展示されているのはそのレプリカなんでしょうが、しかしそれほど貴重なものがこのお寺にあったとは驚きです。
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お寺といえば、大きくてどっしりとした重厚感漂うお堂のイメージを抱きますが、この少し明るくて柔らかくて、若干生活感も漂う本坊も、お寺の伽藍を構成する重要な要素の一つです。この勝興寺は、お堂も本坊も、どちらも江戸後期そのままの姿が残されている、とても貴重な寺院なんだということを改めて理解しました。
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最後に、勝興寺の七不思議のひとつに「三葉の松」ってのがあります。
僕はそのことを知らずに、松の木には見向きもせずに帰ろうとしていたのですが、ちょうど出口でお寺の関係者の方から「とても貴重な三本の松の葉です」と手渡されたのがコレです。その方の話によると、三本の松の葉は非常に珍しくて、持っていれば幸せになれるとか何とか。西洋で言うところの「四つ葉のクローバー」に似た感じのやつってことですね。
どのように扱えばいいのか困ってしまいましたが、ありがたく頂戴して家に帰ってティッシュに包んで引き出しにしまってあります。さて、この三枚の松の葉のご利益に授かることができるかな?
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ってなワケで、高岡市伏木の名刹、勝興寺でした。
勝興寺というお寺がある、というのは知っていたものの、ここまで立派で格式の高いお寺だったとは今まで知らなかったです。
高岡と言えば国宝の瑞龍寺ですが、それに勝るとも劣らない富山を代表する寺院だということが今回の訪問で分かりましたし、令和4年の国宝指定がそのことを裏付けています。
23年もの長い間工事が続いていましたが、それも完成し、今こうして伽藍の全てを当時の姿で楽しめる自分たち世代は幸せだなぁと思った次第です。
伏木の国宝勝興寺、オススメですよ!



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<雲龍山勝興寺>
【駐車場】あり(無料)
【入場料とか】500円
【所要時間】1時間20分

【地図】


【リンク】
雲龍山勝興寺ホームページ
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