「平泉寺白山神社」と呼ばれているその場所は、泰澄大師が霊峰白山を開山したきっかけとなった場所であり、開山後も多くの修行僧を迎え入れた歴史があります。
お寺なのか神社なのかどっちだよなんてちっぽけなツッコミがどうでもよく思うくらい、厳かで神々しい世界でした。
杉の木立や苔の緑も美しい。


かつてこの地には大きな宗教都市が建設されたようですが、今は一部の遺構が残るのみで当時の面影はありません。
ですが、かつての隆盛とは真逆の、まるで時が止まったような静けさが広がっていて、独特の雰囲気に包まれていました。
現代に遺された歴史資産としては、こういうのもアリだと思います。

ってなワケで、今回お伝えするのは平泉寺白山神社です。
僕にとっては今回は3年ぶり、人生2度目の参拝でした。
2020年07月19日 福井県勝山市 平泉寺白山神社
白山といえば、僕ら石川県民が誇る日本三名山の一つ。こちらの記事では、加賀地方から眺めるその麗姿を紹介しました。
古くからこの白山の頂上(禅定と呼ばれている場所)に向かって、加賀国・越前国・美濃国の三つの国からそれぞれ登山道が整備されていましたが、その「禅定道」と呼ばれている道の越前国側の起点となるのが、今回訪ねた平泉寺白山神社です。
福井県は勝山市。僕の住む金沢市からは国道157号線を走って2時間弱ほどの距離です。
神社は勝山市の市街地からそれほど離れていなくて、人里もすぐ目の前ですが、境内とそこから続く登山道は白山国立公園に指定されています。こんなにも人里の近くに国立公園のエリアがあるのがちょっと不思議!

(いつもの三姉妹を連れていざ参道へ!)
下の写真は境内にあった全体図。
一番手前の鳥居「一の鳥居」から拝殿に向かってまっすぐ参道が続きます。「二の鳥居」をくぐると道は二手に分かれますが、そのまままっすぐ行けば拝殿、さらにその後方に白山の三峰(御前峰、大汝峰、別山)を表す三つの社があります。一方右手に進めば苔や杉並木がとても美しく、境内の最も奥に位置する三宮(さんのみや)まで続きます。
全体的になだらかな登り坂ですが、道は綺麗に整備されているのでご年配でもお子さまでも問題なく歩けます。
ただ夏の暑い時期は結構体力持っていかれますね、汗だく必至なので水分補給だけはお忘れなく。

では、三宮に向けて歩きましょうか!
最初は幅の広い石段が続きます。お食事処や自販機のある参道の入口とはまるで違い、その石段は神聖なる領域であることを思わせる鬱蒼と茂る森の中へ続いていきます。
この坂道は「精進坂」と呼ばれていて、昔はこの坂から上には魚を運んではいけないと言われていたようです。

「一の鳥居」です。いよいよここから白山神社の神域に入るのかぁ。
少し身が引き締まる思いで鳥居をくぐりました。

一の鳥居をくぐっても、まだまだ坂道は続きます。
精進坂と呼ばれる一の鳥居の手前まで続く坂道に比べれば、幾分か傾斜が少なく歩きやすい感じ。
こんな感じの坂道が二の鳥居まで続きます。

参道の左手に、モサモサと草が生えている場所がありました。
拝殿の中に掲げられている絵馬から馬が夜な夜な抜け出して人里の田畑を荒らすのを防ぐために、ここに草を植えてその馬の食糧にした、という言い伝えがあって、今でも草が刈られずに残されています。

茂みの中に突如現れる泉。
これは泰澄大使によって平泉寺が開山されるきっかけになったと言われている「御手洗池(みたらしいけ)」で、平泉寺の名前の由来にもなったそうです。
伝説によると、この池に女神が現れ、泰澄大使に「本当の私の姿に会いに、白山へ行け」と告げたんだとか。
ここから山頂までどんな苦しい道のりであっても、この女神の「本当の姿」を目にしたいからこそ達成できた泰澄大使の白山開山。さて山頂ではどのようなお姿を見たんでしょうか、気になりますね~。
非常に濃い緑の中、ピンと張り詰めたような空気が漂います。あまり安っぽい言葉を使いたくはないけれど、これぞ本当のパワースポットではないでしょうか。

しばらく歩くと今度は「二の鳥居」が現れました。
少し形が変わっていて、鳥居の上にちょこんと小さな屋根が乗っかっているのが特徴です。
なんでも神仏習合の象徴であり、ここでしか見られない形なんだとか。この鳥居、結構貴重なんですね。

二の鳥居の先で道が二手に分かれています。
まっすぐ行けば「拝殿」。屋根が明るい緑色、そして足元には苔による濃い緑の絨毯が敷かれていて、とても綺麗な佇まい。
一方右手の道を進めば、境内のさらに奥にある三宮へと続きます。

杉林の中にひっそりと佇む拝殿。
まるで時が止まったような感覚。


平泉寺白山神社と言えば、実は苔がとても有名。
拝殿前の若干広いスペースが特に見応えがあり、誰もが立ち止まって写真を撮っていました。
時々杉の木立から漏れ出る陽の光がスポットライトのように苔を照らし、幻想的な雰囲気でした。


拝殿をバックに広がる苔。
この辺りが、平泉寺白山神社の代表的な景観のようです。


拝殿の裏手には3つのお社が並んで建っています。
中央に位置するのが「本社」、その左手には「大汝社」、右手には「別山社」。
これら3つのお社は、それぞれ白山の御前峰(主峰)、大汝峰、別山を意味していて、それぞれの山の神が祀られています。

御本社。よく目にする神社らしい造りです。
固く閉ざされた扉は33年に一度しか開けられないとのことです。ちなみに次回に扉が開かれるのが2025年。そんなに遠い未来の話ではないようです。
遠方からこの神社を訪ねる場合、せっかくですから扉が開く時期に来てみてはいかがでしょうか。

拝殿や三つの社より先の参道は、これまでと比べると若干幅は狭くなります。
ここから先が多少距離が長くてだらけてしまうかもしれませんが、最奥の三宮目指して頑張ります!

最後の登り坂。
ゴツゴツとした石段を登った先には・・・

平泉寺白山神社の境内の最も奥まったところにある「三宮」というお社。
標札にも書かれているとおり、ここは安産の神が祀られているお社です。
妊婦さんにとってはここまでの道のりは少しキツいかもしれませんが、安産のご利益を授かるためにも、体がラクなうちに参っておくといいかもしれませんね!

この社の奥から、白山禅定道(越前禅定道)が始まります。本格的な登山道なのでそれなりの装備が必要だと思います。
平泉寺白山神社から白山の頂まではおよそ30kmもあるそうです。かつて白山登山をした時、登山道の入口から室堂という宿泊施設まで6kmくらいあったと思いますが、その6kmでさえも非常に苦しい道のりに感じたのを覚えています。30kmって・・・。
昔の人はここから霊峰白山を目指す修行を始めたのでしょうが、これより続くいばらの道にどのような思いでこの地に立ったのでしょうか。

ってなワケで、越前国の白山禅定道の起点で白山信仰の要の地の一つでもある平泉寺白山神社でした。
どこまでも続く厳かな杉並木と、拝殿を彩る緑の苔がとても印象深い神社だったと思います。
同じ福井にある永平寺も独特の雰囲気がありますが、この神社もなかなかのもの。この地ではるか昔の泰澄大師や白山修行僧に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。


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<平泉寺白山神社>
【駐車場】あり(無料)
【入場料とか】無料
【所要時間】1時間
【地図】
【リンク】
白山平泉寺
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