ところが!
日本を代表する日本庭園は他にもありまして、中でも三名園の次点、すなわち日本で4番目に美しいと言われている庭園が、四国の高松市にある「栗林公園」です。結論から申し上げれば、この栗林公園ってのが本当に綺麗な庭園で、三名園に数えられても全然不思議ではないということを今回の訪問で知ることになりました。


日本人はとにかく「三大モノ」が好きですよね。私なんて三大ナントカって言われたら無条件で飛びつきますもん(俺だけか?)。逆に言えば、三大モノに加わることができなかった対象は、残念ながら三大モノよりも知名度が大きく下がってしまう傾向にあります。とりわけ庭園の世界ではその傾向が強いな~なんて思ってます。
でも、栗林公園を知らないのはあまりにももったいないということを、今回の旅で改めて知ることができました。そして、三名園を有する街は、「自分たちの庭園は三名園だから安泰だ」と胡坐をかいてもいられないと思いました。
そんなわけで、今回はその美しさに衝撃を受けることとなった、高松の栗林公園の光景をお伝えいたします!


2015年04月25日 香川県高松市 栗林公園
香川と言えばうどんの印象が強烈すぎて他が少し薄くなってる気がしないでもない。でも決してうどんだけではありません。
高松は四国の交通の要衝で、かつ四国の経済・文化の中心都市。街の見た目は北陸の中心都市金沢よりも幾分か都会的な印象を受けてしまいました。そんな高松の中心部からほど近いところに、とても綺麗な庭園があります。その名は「栗林公園」(りつりんこうえん)です。
庭園の世界での「三大」、いわゆる「日本三名園」が、水戸の偕楽園・金沢の兼六園・岡山の後楽園だっていうのは、一般常識並みに皆さんが知っていることだと思いますが、じゃあ惜しくも三名園に入れず次点にランキングされる庭園があるとすれば、どこが思い当たるでしょうか?
いわゆる名園四天王の最後の一角の座はどこなのか?それが栗林公園である、とする説が非常に多いみたいです。
それどころか、明治から大正にかけての国定教科書には、「栗林公園は樹木や庭石による景観が三名園よりも優れている」と記載されていたらしい。つまり、「栗林公園は三名園よりも美しい」と、国が認めていたってワケなんですね。
僕ら金沢に住む人間は、地元の兼六園こそが天下の名園だと思ってるフシがあります。それは言い過ぎだとしても、少なくとも三名園に適う日本庭園は存在しないと思ってる。三名園の地位を脅かすほどの庭園って一体どんななんだろう?むちゃくちゃ気になるではないか!よ~し、いっちょこの目で見てやろうじゃないの!!
ってなワケで、今回それが実現しちゃいました(^^)。
入口の看板には「特別名勝」の文字が掲げられています。これは国内最高レベルの庭園のみ冠することが許される称号。栗林公園が日本を代表する庭園であることに間違いはありません!
ちなみに、兼六園・後楽園も特別名勝ですが、偕楽園は否。この時点で、偕楽園<栗林公園の図式が成り立ってしまいます。

栗林公園は、高松藩主松平家が築いた大名庭園で、400年以上の歴史を重ねています。その美しさは現代にもしっかり受け継がれていて、「ミシュラン・グリーン・ガイド・ジャポン」で三ツ星観光地として掲載され、アメリカの日本建築・庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」で堂々第3位にランキングされた実績もあります(最新の2014年版では第9位)。
つまり、世界がその美しさを認めているってことですね。
そして広い!栗林公園の面積75万平方メートルは兼六園の約7倍!どうりでとんでもなく広く感じたし、歩き切った後は疲労困憊でした。
今回は、正門である「東門」ではなく、「北門」から栗林公園を攻めました。
門を入ってすぐ、さっそく日本庭園には外せない「池泉」の登場で、安定感のある美しい光景に巡り合えました!


ここで一つ、残念なことに気がついてしまいました。
それは、背後に近代的なビルが見えてしまっていること。場所によってはビル建設中のクレーンのアームなんかがモロに見えていたし、せっかくの美しい庭園の景観が背景のせいで損なわれている気がしてなりませんでした。庭園と市街地が近すぎるのかもしれません。
手前味噌ですが、兼六園の場合、園内から樹木よりも高いところにビルが見えてしまわないよう都市計画が行われているという話。同じく三名園の後楽園・偕楽園も、こんな風にビルが目立っていた印象はなかったと思います。こればかりは三名園と栗林公園の明らかな差を感じてしまいました。

さて、初夏の広大な庭園を歩き回るとしましょうか。
時期は4月下旬で、高松ではツツジがそろそろ見頃を迎えようとしていました。金沢よりも2週間くらい早いかな。

日本庭園といえば、たいていは紅葉が美しいのですが、青葉もなかなか見事!
初夏の眩しい日差しを浴びた若々しい緑が目に鮮やかに映ります。


栗林公園の特徴かもしれないけど、とにかく池が多くて、池が広くて、池が綺麗。
日本庭園と言えば池を中心にグルっと回遊できる「池泉回遊式庭園」ってのがいわゆる業界標準、デファクトスタンダードなわけですが、栗林公園の池泉に対するこだわりはシロートにもビシバシ伝わってくるんです。
兼六園や後楽園も池泉回遊式庭園の代表格ですが、バリエーションの多さは栗林公園ですね。
まずは「北湖」という池から。



池には鯉が沢山泳いでいました。
娘と池の鯉を眺めていたら、別の女の子がエサやり開始。めちゃくちゃ鯉が寄ってきます。栗林公園の鯉はかなり人なつっこい感じでした。

それから「南湖」も美しかった。
南湖は栗林公園で最も大きな池で、かつ最も景観づくりに力が注がれたと言われています。確かに、池を1周してみるとそのことがよく分かりました。とにかく、本当に多彩な景色を楽しむことができるんですよね。
まずは、南湖に架かる「偃月橋」(えんげつきょう)へ。栗林公園の中で最も立派な橋だそうです。


偃月橋から見た南湖。
池に浮かぶ丸い島が特徴的。島の緑はツツジでしょうか。花が咲けばもっと綺麗だったでしょうね。


少し前にTVでも放映されていたんですが、「和船」に乗って南湖を巡るのが人気なんだとか。舟から見る庭園の景色もきっと美しいんでしょうね。
かつての大名たちも、池に舟を浮かべて優雅に景色を楽しんだと言われています。現代では大人610円払えばどなたでもかつての大名気分を味わうことができるみたい。

さて、栗林公園で最も大きな南湖をグルっと一周しましょうか!
栗林公園は「一歩一景」、すなわち、歩を進めるたびに心に響く景色が楽しめると言われていますが、確かにその通りだと思いました。
とにかく、次から次へと絶景と言っても過言ではない光景が目に飛び込んできます。





「渚山」(しょざん)というビュースポット。
園内の茶店の方に「栗林公園で景色が特に綺麗な場所は?」と尋ねたら、この渚山の名も挙がったんですよね。
栗林公園は栗の木がいっぱいあるのかなぁって思いますが、実は栗よりも松の木が有名なんだそうな。園内のいたるところに松の木が植えられていましたが、個人的に最も松が綺麗だったのが、この渚山からの光景でした。
まるで「松の海」みたい。


ってかさ、デカいんだよ、栗林公園は!
なんかもうおなかいっぱいって感じなんだけど、まだまだ見どころは続きます!
ふぅ・・・とりあえず一服しましょうか。


これまで著名な日本庭園をいくつも見てきましたが、こういう光景は初めて見ました!
いかにも南国って感じ!
栗林公園には「鳳尾塢」(ほうびう)というソテツの森がありまして、日本庭園にありながら日本離れした光景が楽しめました。温暖な地方ならではですよね、さすがにこれだけは北陸の兼六園には真似ができません。


南湖の畔にある「楓岸」(ふうがん)と言われている場所。
その名の通りカエデの木がとても多くて、栗林公園でも有数の紅葉スポットだと思われます。
この時期は新緑が鮮やかで、それもまた見応えがありました。

栗林公園の数多くの池泉の「水源」がありました。
「吹上」(ふきあげ)と呼ばれているそうで、栗林公園の広大な池のすべての水はここから園内に流れています。
驚いたのは、その水の透明感!ここは四国の中心都市高松のど真ん中なんですが、街の中心にいることを忘れさせてくれるほどの美しさでした。
金沢の兼六園は辰巳用水から水が引かれていますが、どちらの水が綺麗かは分かりません。ただ、水の綺麗さを実感できる「演出」は、栗林公園の方が上だなぁって認めざるを得ません。


吹上から南湖へつながる水路には飛び石があって、娘が何度も何度もピョンピョン飛びながら水路を渡っていました。
こういうのがとっても好きなお年頃。先に進もうとしても、拒否されてしまいます。
彼女が飽きるまで待たなきゃなりませんな(笑)。

ピョンピョンが飽きたら、次はソフトクリームに意識が移りました。
はいはい、どうぞお召し上がりくださいませ。

ってかさ、お父さんが見たい光景を早く見せてくれよ!
栗林公園で最も有名な景色と言えば、「飛来峰」(ひらいほう)から見下ろす南湖の光景です。今回の栗林公園の最後にとっておいた、とびきりの絶景です。
飛来峰は、富士山に似せて造られた人工の山でして、この山の頂上から見下ろした南湖の光景は、栗林公園を代表する景色として非常に有名です。地元の兼六園にあてはめるなら、「ことじ灯籠と虹橋」に匹敵すると思われます。
ここに来るまで随分歩いてもう足が棒のようになっちゃいましたが、絶景を求めて最後の力を振り絞って飛来峰を登ります。

「飛来峰」の頂上からの眺め。
南湖の全景と、手前には偃月橋。
おぉ、これぞ栗林公園!大絶景!!感動した!!!
ガイドブックなんかでお馴染みの光景ではありますが、やはり実際に肉眼で見ておくべきだと思います。


この大絶景に娘も大満足でした(^^)。

ってなワケで、高松の名園、栗林公園でした。
栗林公園は日本三名園にはなれなかったけど、その実力たるや日本三名園に全くひけをとらないどころか、ともすると三名園を上回るポテンシャルを持っているのかもしれません。
そのテの話は結構前から聞いていましたが、正直なところあまり真剣には捉えていませんでした。今回の旅で改めて栗林公園の素晴らしさを知った次第です。また、「三名園」を冠することができてウハウハだった庭園たちにとって、非常に大きな脅威になりうることも知ることができました。

「三名園よりも栗林公園のほうがいいね」という意見があっても全く不思議ではないということを知ることができただけでも、今回の旅で栗林公園を訪ねた意味はあったかなと思いました。
栗林公園の全てをお伝えすることはできませんでした。もしその全てを知りたいならば、夏、秋、冬も訪れてみなければいけませんね。
高松は金沢からはかなり遠い街ですが、でもこの栗林公園があるだけでも、訪れる価値が十分にある街かもしれません。また別の季節、特に秋の紅葉シーズンに訪ねてみたいです。
<栗林公園(特別名勝)>
【駐車場】有(有料)
【入場料とか】410円
【所要時間】2時間
【地図】
【リンク】
栗林公園
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