01 2019

魚津埋没林博物館と、かつての杉林が残る「杉沢の沢スギ」/富山・黒部川の地下水の神秘を感じる場所

蜃気楼の街として知られている、富山県魚津市。
そして、湧き水の町として知られている、富山県入善町。
今回はそんな二つの町に共通する「地下水の神秘」にフォーカスを当ててお伝えしたいと思います!

魚津市の海岸部は、今でこそ漁港が整備されて港町の風情が漂っていますが、かつては広大な杉の森が広がっていました。
魚津の町を訪れると、とても森があったなんて想像できないんですが、その地中には今でも無数の杉の根っこが埋まっているんだとか。
およそ2000年前の森の姿を今に伝える、「魚津埋没林」に触れられるのが、魚津埋没林博物館です。

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そして、かつての杉の森がほんのわずかですが現代に残されている場所が、入善町の「杉沢の沢スギ」
決して第一級の有名観光地ではないけれど、かつてのこの地域の姿を今に残す、とても貴重な自然の遺産。
町の喧騒から離れ静寂に包まれた杉林を歩くと、日頃の疲れが癒されます。
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ってなわけで、今回の記事では黒部川の伏流水の「神秘」を味わえる二つのスポットを紹介します!
富山を訪ねた際、もしお時間があったら是非この二つのスポットも訪ねてみてください。
賢くなれること請け合いです!


2019年07月27日 富山県魚津市 魚津埋没林博物館


蜃気楼や埋没林で知られる魚津。
初夏の魚津の海岸沿いは、天気が良くて暑い日になると蜃気楼に一目会おうと多くの観光客が集まります。
でも蜃気楼を初めて見に来たという人は、もし時間が許すなら、蜃気楼を見る前に「魚津埋没林博物館」に立ち寄ることをオススメします!
その名の通り、魚津の埋没林をテーマにした博物館なんですが、蜃気楼も埋没林と同じくらい展示が豊富で、蜃気楼が現れる仕組みなんかがよく分かります。

魚津港のすぐそばに建つこの博物館は、円錐の展望台や三角形のガラス張りの建物がとっても目立つので、山の手を走る高速道路からもその存在がバッチリ分かりますよ。
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博物館のエントランスがこちら。
初めて来た人は、博物館らしからぬ外観にとまどってしまうかもしれませんね。
総ガラス張りでなんとなくカフェっぽい感じですが、実際エントランスにはカフェがあり、週末のお昼時はそこそこ賑わっている感じでした。
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魚津埋没林とは、今からおよそ2千~3千年前にこの地を覆っていたであろうスギ原生林の痕跡です。
1930(昭和5)年に魚津港の工事の際に、砂浜付近から樹齢500年の杉の根が次々と発掘されたそうです。
かつて魚津の海岸はスギ林が鬱蒼と茂っていたと考えられていますが、その林が近くを流れる片貝川の氾濫で地中に埋まり、さらに何等かの原因で海面よりも低く沈んでしまいました。
なぜ数千年の時を経ても腐らなかったかというと、立山連峰から流れ下った冷たい湧き水がこんこんと湧いていたこと、あるいは泥炭地で酸素が乏しく、根っこを分解する細菌の活動が抑えられたことなどが原因で、腐敗を免れたということです。
魚津埋没林は当時の周辺の環境を今に残す貴重な自然遺産として、この博物館の敷地とともに国の特別天然記念物に指定されています。
特別天然記念物は自然界の遺産としては国宝級にずばぬけて貴重なものでして、この博物館の敷地と、そこに保存されている埋没林はまさに「国宝」と言えるものなんです。
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三角の建物が特徴的。
博物館内には埋没林の発掘現場がそのままの状態で保存されています。つまり博物館は埋没林の覆堂(中尊寺金色堂みたいな)的な役割も果たしています。
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埋没林が展示されているのは、「水中展示館」「乾燥展示館」「ドーム館」の3つの建物。
順番に見ていきましょう!
まずは水中展示館からです。
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水中展示館は、その名の通り、埋没林の発掘現場と根っこを大きなプールの中で保存しているもので、この博物館の展示物の目玉です。
1952年の発掘現場にそのまま水を満たして保存しているもので、この水は付近を流れる片貝川の伏流水をポンプで汲み上げたもの。
冷たい地下水です。
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プールの中には、まるでオバケのような杉の根がデーンと鎮座しています。
その迫力は想像以上!思わず「おぉぉ!」と唸ってしまいました。
まるでエイリアンでも保存しているのかのごとくです。
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水の上からの観察は、水面に反射する光でちょっと分かりにくかったりします。
でもご安心ください!地下通路に降りていけば、水中の様子もよ~く分かるんです。
しかも、水中から見た時の水面に水中の様子が反射して、ちょうど上下対象の像ができるようにも工夫されているらしく、バッチリ写真映えする光景を楽しむことができました!
まるで大きな火山を見ているようだ!
この水中のシーンこそが、魚津埋没林博物館の真骨頂ではないかと思います。
窓はタオルで拭いてあげないとすぐに水滴ができてしまいます。それは水がいかに冷たいかを物語っているようでした。
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一方、乾燥展示室ではその名の通り、水にはつけずそのまま空気に触れる状態で根っこが保存されていました。
乾燥展示室の根っこは実際に手に触れることができます。
触れたからと言って、特に大きな感動があるわけではないのですがw
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魚津港の工事の際に見つかったこれら埋没林の杉の根は、当時人の手によって少しずつ切られていました。
今みたいにチェーンソーがない時代は、金づちやノミを使っていたんでしょうか、その痕跡が根っこの切断面に残っています。
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古くて倒れてしまった根っこを抱えるように成長した根っこなんかも。
大昔に杉林で見られたドラマがそのまま残されているようです。
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ドーム型の展示館、「ドーム館」は、1989年に行われた埋没林の発掘の現場にそのままドームを被せたもの。
埋没林の樹根が発掘当時のままの状態で保存されています。
2000年の時を超え、こうして博物館のドームに覆われるなんて、当時の林の木々は思いもしなかったでしょうね~。
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博物館の3F企画展示室では、「お天気としんきろう」をテーマとしたパネル展が行われています(2019年10月31日まで)。
蜃気楼と天気は密接な関連性があって、蜃気楼が出現する際の気象条件や、蜃気楼の翌日は荒れた天気になることが多いといった蜃気楼にまつわる「観天望気」が紹介されていました。
係の方の丁寧な説明もあり、蜃気楼を疑似的に発生させる実験なんかもあって、子供も大人も楽しめるコンテンツでした(^^)。
蜃気楼がとっても身近に感じましたね。
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埋没林博物館は「蜃気楼出現予測」というのをやっていて、当日の蜃気楼の出現可能性を公表しています。
もし春に魚津へ蜃気楼を見に行く人は是非この予測に目を向けてほしい。
この企画展で初めて知ったのですが、蜃気楼予測で「40%」以上とされている場合、蜃気楼の出現率はなんと88%にもなるそうです。
40%の日に「なんだ40%か、だったら諦めよう」と思っちゃいけないのだ!
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最近はドローンにカメラや観測機器を載せて、蜃気楼が出現している時の富山湾上の空気の状態を調べているようで、そのドローンを使ったデモ飛行も見ることができました。
撮影現場や工事現場、あるいは災害現場など、ドローンはホント様々なところで活躍しているという話はよく耳にしますが、実際にドローンが飛んでいる姿を間近で見たことがなかったので、結構新鮮な体験でした。
富山湾の蜃気楼はまだまだ謎が多い現象なのですが、その謎を解く手段としてドローンが活躍しているのは意外でしたね~。
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富山県下新川郡入善町 杉沢の沢スギ


是非とも魚津埋没林博物館とセットで回りたいところがあります。
魚津の埋没林は、かつて魚津の海岸近くに鬱蒼と茂っていた杉の林の痕跡です。
一方、その杉林が今現在もほんの少しだけですが残っている場所があり、それが杉沢の沢スギです。
埋没林博物館からおよそ15km、20~30分ほど車を走らせたところにあります。
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杉沢の沢スギって・・・
上から読んでも下から読んでも的な、もしかしてウケ狙いなのかと疑ってしまうようなネーミングですが、決してそういうわけではありません(^^;。
「杉沢」というのは、かつてこの付近に多くあった地下水を源とする植物群落のことを指し、沢スギはそこで育った杉のこと。
杉なら山に行けばいくらでも見ることができるけど、平地で、しかも海岸からわずか100mの距離に群落をなしているのはとても珍しく貴重な存在なので、国の天然記念物に指定されています。
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田園地帯の中に突如現れる杉林に違和感を覚えるかもですが、かつては非常に広大な杉林だったそうです。
農地開墾のため次々と杉は伐採されてしまい、かつて130haあった杉林は今では僅か2.6haに。
かつての姿を残すのはこの一画のみになりました。
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いざ、杉沢の沢スギの中へ!
すぐそばが田園地帯であり、また海岸であるとは思えないくらい、鬱蒼としたセカイが広がっていました。
山中で見られる杉林に比べるとかなり雑然とした林に見えますが、これは原生林だからなんでしょうね。
先ほど見てきた魚津の埋没林も、かつてはこのような姿だったのかもしれないなぁ・・・なんて思いながら杉林を歩きました。
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この杉林では、杉の「伏条更新」というものが見られます。
日本海側の杉の特徴の一つで、雪の重みなどで横倒しになった枝が地面に接した場所から根が伸び、新たな樹木になるという独特な増え方をするそうです。
雪の多い山間部ではよく見られるのですが、平地で伏条更新が見られるのは国内ではここ杉沢の沢スギだけなんだとか。
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下の写真はおそらく伏条更新だと思われますが、地面に水平に伸びた枝から上に向けて若杉が成長しているサマが分かります。
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そして、林内はあちこちで清水の流れる音が聞こえます。
ここは黒部川扇状地の扇端部で、黒部川の伏流水が地表にコンコンと湧き出づる場所。
杉林を流れる小川も湧き水です。
年間を通して水温が一定の湧き水が、沢スギを大きく成長させました。
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立山連峰に降った雪や雨が、黒部川の急流を流れ、平地では地下水となり、そしてここに湧き出して杉林を潤しています。
この地下水は森をはぐくみ、この地域の人々の生活の水になり、そして2000年以上前の杉の根を腐らせずに現代に遺してくれたわけです。
なんていうか、大地と水のロマンを感じるじゃないですか!
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ってなワケで、魚津の「埋没林博物館」と、入善の「杉沢の沢スギ」でした。
埋没林博物館(と、あわよくば蜃気楼)だけ見れば十分という人も多いでしょうが、もう少し突っ込んでこのエリアのことを知りたければ、杉沢の沢スギにも足を踏み入れてみると良いと思いました。
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<魚津埋没林博物館>
【駐車場】あり(無料)
【入場料とか】520円
【所要時間】1時間

【地図】


【リンク】
特別天然記念物 魚津埋没林博物館 ~埋没林と蜃気楼の博物館~


<杉沢の沢スギ>
【駐車場】あり(無料)
【入場料とか】無料(沢スギ自然館から遊歩道が整備されています)
【所要時間】30分

【地図】


【リンク】
杉沢の沢スギ・沢スギ自然館
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富山県 魚津市 入善町 子供向け 自然現象

2 Comments

まっさ  

>ぽてとぉ~さん

こんにちは♪
太古の杉の根が腐らずに今も残っているのは、たまたまこの地に立山連峰からの冷たい湧き水が湧き出しているから。
偶然が重なった上で、今こうして昔の情景を感じられるんですよね~、ロマンを感じます。

スギ花粉症は、戦後山に積極的に杉を植えた結果、自然の量を遥かに超えてしまったから、でしょうね。
ある意味「人災」だったりします。
昔はそういうことはなかったんじゃないかな、杉と人とがちゃんと共生していたと思います。

それにしても、山では杉を積極的に植えていたのに、貴重な杉沢の沢スギは伐採されるなんて、ちょっと皮肉な話ですよね。

2019/09/08 (Sun) 10:59 | EDIT | REPLY |   

ぽてとぉ~  

歴史を物語る古木の杉が見れる博物館 私も行ってみたいですね~(*'▽')♪

杉の博物館というのも珍しいですが、それ以上に展示品の杉の根・・・あぁどういう風に撮影しようかなぁ~とわたしも興味津々です。

春になるとスギ花粉を広げてわたしを苦しめてくる(´;ω;`)杉の木ですが、こうやってみると新緑と川のせせらぎが聞こえてくるようです。

追伸
わたしも北陸3県を絶賛満喫中です!
いつもまっささんの過去の日記を見て、撮影場所を参考にしております。
これからも、素敵な写真と日記を楽しみにしておりま~す(*'▽')♪

2019/09/04 (Wed) 07:31 | EDIT | REPLY |   

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